[ザ…ッ、と音立てて広がり生え伸びる矢竹はそのしなやかな頑丈さのみならず、豊かな葉が視界の邪魔をする。
振り上げられた鎌の柄は、当初の狙いのままには振り下ろさせずに済んだものだが]
他にもあるが、其方とは相性が悪いでのぅ!
潮は草木を枯らす故、其方に向けるは分が悪い。
[>>*51向けられた感嘆に返すのは、偽り無き答え。
多少なりと潮風にも耐え得るものを選んだが吉と出るか否かは読めない。
力比べにもどれ程敵うものかと視線はそらさぬまま、扇を咥えて空けた手を一つ、打ち鳴らし。
生んだ稲光で身近な矢竹を一本撃ち焦がすと、葉を落とし硬さは保ったままのそれを両手に持って。
そうしている間にも上がる水柱は、見る間に己を囲う矢竹の壁を乗り越える。
見上げた空に見えるは、水の揺らめきをそのまま刃と変えた大きな鎌と、潮香纏う蛇の竜]