一番古い記憶は、小さな、まるで犬小屋のような家にいたこと。
凍りついた窓から見える外は、ケーキに振りかけた粉砂糖のように真っ白だった。
粗末なテーブルに掛けられた赤いクロスの上にも、雪を被ったモミの木とそっくりなケーキがあった。『四歳になった』のだと教えられて、俺は嬉しかった。
赤い髪をおさげにした女は、小さな俺を膝に抱いて幸せそうに笑っていた。
間近に覗き込んでくる猫のような瞳は、俺と同じ金色をしていた。
『かあさん、めが、おほしさまみたいだ』
『そう? ……それは、お前の目の中にお星様があるからだよ。きっとそれを映してるからなのね』
その前の年のクリスマス、教会に飾られていたツリーの天辺の星のように、彼女の眼はきらきらとして美しかった。
家の中には俺と彼女の二人だけだった。
それでも寂しかったような覚えはない。
たぶん、俺は幸せだったのだろう。