リーン…
[蓮鈴の音が再び響き、翻る唐衣の裾より放つは、紅蓮の蓮花。
だがそれは、疾駆する獣に直接は向かわず、くるくると躍るように舞いながら、その獣の軌道の先へと落ち、瞬時に花弁を散らして、数十本もの、蓮茎と蓮花の茎を伸ばし、水面に近付いた雷狼の足へと絡み付き、水中へと引き込もうとする。
それと同時]
参る。
[涼やかな声と共に、花神の足元より水飛沫が上がる。
風に舞う花弁の如くに宙に舞い上がった薄紫の姿は、水飛沫のきらめきを、そのまま纏って、蓮の茎に足を止められた獣の上、銀の牙持つ従華へと向かっていく。
花神が待ち受ける策を捨て、対する相手に自ら向かうは、例無き事、と、闇桜の魔ならば覚えていようか?*]