[出身国のことを聞くのは、この学校の最大のタブーだ。だから互いに故郷の話をしたことはない。けれど共に暮らしていれば、何となく家や家族のことが匂ったりはするものだ。けれどベリアンには、それが一切なかった。あまりにもないから、気にならなかったといえば嘘になる。だから一度だけ、聞いたことがある。『お前、家と連絡とか取っていないの?』と。結局それっきりで、家族の姿も気配も目にしたことは未だないのだが]