ッぐ、
[花神に喰らい付いた雷狼が、その牙を緩め男の下へと駆ける。
半ば体当たりをかますような勢いで、男の身体を掬い上げると、即座に距離を取った。
左のわき腹、元々あった古傷のすぐそばに、新に穿たれた傷から、鮮血がしたたり落ちる。
主の加護が無ければ、それ以上立つこと叶わなかったかもしれない。
永い時をかけ、何度も何度も演じられる神話のように。
語り継がれる英雄たちのように。
様々に塗り替えて、繰り返される逸話のように。
肉体が急速な再生を見せ、穿たれた穴の修復を試みる。
時間にして数秒。
傷が消えるわけでは無いが、もう一度戦場を駆けられるようになるまで、金の獣が男を護衛するように、花神を睨みつけた。*]