[振り下ろしの一撃は、確かに幻燈師を捉えていた。
けれど、返る手応えはない。
伝わるのは恐らく、虚空を拳が切る感触のみ]
さすがにそいつをまともには、喰らえないんでな!
[直後、声が響くのは中空から。
視線上げれば翼広げ舞う幻燈師の姿がそこにある。
風で軽減するにしてもこれは限度を超える、との判断から、とっさに幻影の分身を生み出し、自身は可能な限りの高速でその場を離脱して強引な回避を決めていた]
恨みっこなしは望むところ。
ヴィンセント・アドウェナ・アウィス……推して、参る!
[一歩遅れて返す名乗りと共に、左手に握るのは真珠色の長弓。
かき鳴らした弓弦から大きめの風の刃がひとつ飛び立ち、巨躯へ向けて真っ直ぐに飛んだ。*]