[ 全てを聞き終えたあと。
静かな語調で画家は話し出す。 ]
きみはあくまで傍観者であろうとするんだね。
…いいや、決してそれを悪いこととは言うまいよ。
ボクにはボクの、きみにはきみの生き方がある。
きみがきみの生き方に殉じることが出来るよう
密やかに願っていることしかできないけど――、
いつか、きみの郷が新たに見つかることを祈ろう。
…軽口の言い合える一人の友人として。
[ 宮廷画家はすでに明日も知れぬ身、
彼が郷を見つけたとして便りを聞ける確かはない。
けれど、
何かしら言葉をかけずにはいられなかった。
一人の友として根無し草にも似た
彼の行く末を案じる心は持っていた故に。* ]