[そうまでしてから射かけた一矢は彼には当たらなかった。当てられなかった。素顔をあらわし灰色の翼でもって飛ぶ、“兄”の面影を持つ相手には]……ほんとにさあ。勝てっこないよ。こんなの。[負けを認める言葉をつぶやいた、だというのに表情は穏やかだった。手から弓が離れて落ちた。術で紡がれた糸もほどけるように消えた。空っぽの両手を広げた。剣呑な戦は続いているというのに、そうやってまるでかつてあった日常の再現のようなことをするのだ*]