だが、俺を止めるなら
[ 斬られた痛みに一瞬、足を止めれば、重力に負けて男の重い身体は下へと落ちる。しかし、ただ落ちる筈もなく、無事な左脚で壁を蹴り、同時に右手を伸ばして、ディークが引き戻そうとする糸を、その手に掴んだ ]
足の一本も、斬りおとさねばなっ!
[ 刃同様の糸はその手指をも切り裂いたが、男は、傷にも痛みにも頓着せず、力任せに自分の方へと糸を引っぱる ]
うおぉっ!
[ ディークが僅かにでもバランスを崩せば、しめたもの。左手に握った刀が、右肩を狙って振り下ろされる。
踏み堪えて、刃を避けたとしても、糸を引き寄せた勢いも借りて、ほぼ真上から落ちて来る男の回し蹴りが、続けて迫る。
蹴りを放った足は先刻切り裂かれたはずだが、すでにその傷はほぼ塞がっている* ]