[ 文字通り、壁を駆け上がる男の後を追って蒼が奔る。鋭く細い刃と化した糸は、一度跳ね上がって軌道を変え、男の右の脹ら脛を、すっぱりと斜めに切り裂いて、朱を散らした ]
くぁっ!
[ 斬れ味鋭く裂けた傷は、傷ついた瞬間ではなく、一瞬遅れて男の身に痛みを伝える ]
貴様、も、相変わらずだなっ、くそ餓鬼っ!
[ 若さ故か、荒削りではあるが、恐らく生来、勘が良いのだろうとは、以前対峙した時にも思った。
今も又、ディークの狙いも動きも、基本的には的確なものだ。利き足を傷付けられれば、男とて、当然、動きは鈍る、が ]