[元気そうなふたりにすこしだけ安堵したけれど、なんとなく、近寄り難くて、離れた位置で足を止めた侭に。
駆け寄る事はおろか、声を掛ける事も、出来なかった。
きっと、彼らは、自分を見て、怯えるのだろう]
……ねぇ、キミは、僕が「ねぼすけおおかみ」で、良かった、と、少しでもそう思った?
[戸惑いがちにロー・シェンに伸ばし掛けた手を、触れずに、下ろす。
ほんとうは、彼も、「違う誰か」の方が、よかったんだろうなぁ、なんて。ぼんやりと、思う。
誰といたって独りで、帰る場所なんてなくって、……これで、寄り添う場所もなくなったのかと、昨夜までは手を差し伸べて傍に居てくれたであろう「うさぎたち」を眺めて、気付いた。
力なく握った、鋏を見下ろす。
どうしようか、居てもいい場所が、もう、何処にも見当たらない…]