[そうして、皆の集う一室を抜け出し、通路へと戻る。
もう、船の通路は一面の白に溶けかけて、輪郭を失った景色の中、ひとつのドアだけが誘うように目の前に佇んでいる。
約束は、もう、破った。
この耳には、今も――…
背中から届く、あまりにも優しく心を満たす音の響きに、足を止めそうになる。>>150
ひとつひとつの音を聞けば、記憶が蘇る。
素人だと言いながら、真っ先に名乗り出て銃を手にしたのが、最初に見たときだったか。
自分の身も顧みず人のことばかり案じて、青くなったり泣きそうになったり、痛いときは痛いと弱音を言ってほしいと――>>1:511
痛むことはなかったから、結局それは最後まで無理だったけれど。
なんだか、随分と、たくさんのものを貰ってばかりだったような気がする。
そうして、最後に呼ばれた、名前。>>7:146
“ギターの、音”>>5:10
そのすべてを、刻み付ければ。
届かない声を届けようとすることもなく、ただ、心から――あたたかそうに、笑った。]