[ふつりと湧いた怒りが収まることはなく、煮え滾るものを胸の内に溜めながら腹心の冷静な声を聞く。怒りに霞んだ頭では、絶対なる主君という言葉さえ空虚なものに響いたが、そこから続く言葉と声のいろに、心が揺れた。] …………おまえは、いつもそうだ。[深い呼吸を二つするほどの間を置いて、淡とした声を零す。] 俺の先回りをして、俺の分まで骨を折って、 全部終わってから、涼しい顔で言ってくる。 俺は、おまえの背に負われて勝ちたいわけではない。[言葉の内容ほどには、声に咎める色はない。]