同情なんかいらないわ。
むしろ、この国での暮らしの方が、あちらよりもずっとマシだもの。
[語り掛ける声>>*3には、肩を竦めて苦笑を返す。
祖国の風は、強くて乾いて冷たくて。草木がほとんど育たぬ荒野に吹くと、砂埃を高く空へと舞い上げる]
赴任先は、わたしが志願したの。
あの要塞が、どうしても邪魔だから。
上官は…───あのお姫サマは、予想していたよりずっとお転婆だったけどね。
[時には八つ当たりで、頬を張られる事もあったっけ。
頬に何度も大きい痣を作ったが、鼓膜は破かれなかったし、鼻も歯も無事だ。
むしろ、幼少の頃に祖国で過ごした養成機関の方が、精神的にも肉体的にも、よほど過酷だったといえる]
あの砦が落とせるなら、げんこつを食らうくらい何ともないよ。
[撲殺なんて大げさだよ、ともう一度苦笑した。
何ともないはずだったのに、あんなこと…───反逆者のマネをするから。あの時わたしは、引き金を引くしかなかった。*]