―いつかの回想―
[数千年前。
クレステッドが最初に魔軍に加入し、まだ日が浅い頃。
まだ「儀式の間」で自身の、そして魔王のための研究をする余裕があった頃。
ギィはクレステッドのことを、熱心だなと軽く評した。
その口調はどのような色を帯びていたかは解らないが]
……我が主の、我が軍のためですから。
それに、私のためでもあります。
[現在から比べると、余裕のない言い方ではあるものの、どこか涼しげに応える彼は今と同じもの。
そんな折、ギィはクレステッドに問うた。クレステッド自身の目的は何なのか、と。
その質問にどんな意味があったのかは、クレステッドの知る由もないが。
その問いには、ゆっくりとした口調で答えた]
私はただ、見返したいに過ぎません。私を否定した連中、全てを。
[彼の声は普段より静かなものでありつつも、確かな輪郭と芯を感じさせる声音で。
つまりこれは、無自覚のうちに、彼の感情が荒いうねりを上げている時の合図なのであった]