[噛み付いた耳からそっと牙を放す。
溢れる血の蕩ける様な甘さに幾ら誘われても、生きた肉を牙で食い千切るなんて荒業は自身にはこなせそうにない。
細やかな傷跡が、ぷくりと血の珠を産む。
痛々しい傷跡にそっと舌を這わせた]
ごめんね、痛かったよね…
…っ、……――!!??
[瞬間、赤い世界の景色の一部だった彼女が、色を持った。
恐る恐る手を伸ばして、…――消える事のないその身体を確かめるようにそっと頬を撫でれば、独りきりじゃなくなった、その事実に込み上げる歓喜。
堪え切れず、縋る様にきつく小さな身体を抱き締めた]