[彼女の言葉に返事をする余裕はもうない。
拙い抵抗は何の意味も持たず、上向かされる。
――白を纏う刃を携え微笑する女は妙に艶やかで美しい。
虚ろな頭はそんな逃避的な思考に浸り、直ぐに現実へ戻される。
顔に当てられる刃。凍える冷たさなのに、皮膚は焼かれて熱い。
これから何が起こるのかを不運にも推察し、男は唾を呑んだ。
ごくりと咽頭が上下する。
刀身が当てられる。
嫌だなぁ、嫌だなぁという呟きは脳内で何処か他人事のように。
瞬きをすれば、痛みで生理的に溜まっていた涙が零れた。
刃が引かれる。
暗転]