[背にふっと落とされた熱は、降り始めの雪が溶け広がる様にじわりと沁み込んだ。続いて肩、首元からと、伝わる温度にくらり、陶酔する。
彼から熱を奪っている感覚にすら陥り始めたところでおもむろに離れ]
さて。今回の船旅も終わりだ。
今日まで本当に……楽しい時間を過ごさせてもらったよ。
またランタンの灯りが消えてゆくのは物寂しくもあるが。
[だが視線は決して離さない。眼に焼き付ける。
死へと往く絆を彼が持つのならこれは最後かも知れんとぽつり呟き]
君とまた会える日は来るのだろうかね?
――もしも、その日が来た時には。
次はこちらから声を掛け、同じように握手を求めよう。
[来るか分からぬ何時かへと、静かに思いを馳せた。眼前に再び舞い戻る犬――いや、青い鳥の姿はそこにあっただろうか]