― いつか、夜の帳の中で>>-911―
[夜盲と言えども異形の端くれ、その瞳は闇を見通す。
まして、其れがかつて焦がれた血の気配を纏えば]
今晩は。
[足を止めて空を仰ぐ。
木々を揺らす風にふわりと帽子が攫われて、其れでも"彼"から眼差しを外すことはなかった]
ありがとう。
[細めた空色が映すのは、懐かしい小柄の兎。
初めて出会った時の様に、彼は逆さを向いていた。
ご丁寧に、ティーセットまで持参して]
ふふ、そのようですね。おめでとう御座います。
[確かに彼の腕にもう枷はない。心なしか雰囲気も変わったようだ。それでも彼であることに、違いはないだろうけれど。
柔らかく微笑んで、ぱちぱちと拍手を贈る]