−−尚書官長執務室−−
[こんなつもりじゃなかったのに、気づいたら彼に撫でられていた。
誰にも会うつもりはなかったのにピンクと出会ったり、本当に不思議なものだ。かけられた言葉はなんだかむず痒く、彼に会いたいなんて本心を見透かされて少し恥ずかしかった。それに、なんて答えたっけ。彼にバレたら大目玉だろう。
よくよく考えたら、よく生きたほうだ。まさか、寿命という死神に刈られてしまうとは予想外。
彼は相変わらず、優しそうな顔だ。
南と北が攻めて来るっていうのに呑気なものだ。西の森は大丈夫だろうか。そんな心配も見られず、随分達観しているようだ。反対に心配になり、体を寄せてみる]
ーーチュッ?
[そう、君の騎士様だ。
だから、そんな顔をするなよ。
ずっと、守っててやるんだから、感謝しよろ。
君の醜いプライドも本当は優しいその気持ちも全部まるっと守ってやるんだからさ。
涙なんてやめてくれ]
チュウ……。
[定位置に戻されれば、死んでいるはずなのに暖かな鼓動が伝わってくる。
次に"ふたりごと"を言うときにはちゃんとこの言葉が届くといいなって。
ふわふわと消えていく意識の中、心から願った*]