5日目・夜 礼拝堂にて
暗い礼拝堂の一角。
今回の騒動の中亡くなった人達が寝かされている。
腐敗しないように処置が施され、その周囲はひどく涼しい。
そんな中に男は訪れ、とある遺体の傍に腰を下ろしている。
床に置かれた手持ち燭台はわずかな範囲のみを照らして、男の表情を判然とさせない。
膝を抱えたその姿は普段とは打って変わって、いやに小さく見える。
「なぁんでオレが蘇生されたんだろうなぁ…?」
覚醒直後はハッキリ覚えていたあの世での記憶も今や大分朧気だ。
そんな茫洋としたものの中でも、覚えているのは彼と友人になれたこと。
彼にとっては勢いで言ってしまった言葉だったのかもしれない。
それでも自分はとても嬉しかったのだ。
「お前さんが本物の占い師でも偽物でも、オレはどうだって良かったんだがなぁ」
それは立場的なものではなく。
ピクリと男の手が動く。
彼の意思を聞かずに触れるのはポリシーに反するが、それでも、きっとこれが最後だろうから。
彼の顔に触れ、頭を撫でて、長い銀髪を梳かす。
「お前さんの髪は、こんなに柔らかかったんだな」