人狼物語−薔薇の下国

533 R【P】村2


【独】 司祭 ルートヴィヒ

― 公爵別邸の書斎 ―

そこには大公の私室にあったものとは雲泥ほどの差がある簡素な執務机とソファ、そして壁一面に設えられた書棚にはたくさんの書籍が並んでいた。多くは経年と風雨によって朽ちかけているが、その中でも奥の方に隠されるように置かれた、中身が見えないように金属の戸のついた小さな書籍庫の中身はまだ無事であった。日々の無聊を慰めるような書物のひとつでも、と…興味本位で一冊手に取ると、パラパラとページをめくった。そこに衝撃的な図と文章が飛び込んでくる。

「人間はサルから進化した」

図には四つん這いのサルから、段階を経て二足歩行を行う人間の姿が描かれている。人は神が自らの姿に似せて作り給うたもの、…が神学校で学び叩きこまれた創世記の記述と大きく食い違うその記載に、…は小さく息を呑み、書物の表紙を見てその題名を確認した。

「進化論」

厳重に隠された書籍庫の中には、それ以外にも生物や天文学、考古学といった教会の教えとは異なる自然科学の理論を主張する書物が並べられていた。

「これは一体…?曽祖父はここで何を…?」

目にした情報とこれまでの教義との食い違いを咀嚼できずに、…はしばし呆然としたが、その後、数回に分けて書籍庫に収められていた書物を教会に持ち帰ったのち、村の男性陣に頼んで書籍庫を教会の自室まで運んでもらい、村の金属細工職人に依頼して金属戸に鍵を取り付けてもらうと、再びその中に書物を収めた。

その後…は夜な夜な、ロウソクの明かりを頼りにそれらの書籍を手繰り、それらを全て読み尽くした後は、村人に悟られぬように旅の商人に依頼して自然科学に関する書物を贖うこととなった。

(-647) 2020/03/09(Mon) 19:10:08 (one_cat_cafe)

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