[ケラケラと、男は声を出し、喉を震わせて笑った。
本当に、おかしなものを見た、と言うよう。
ぱっと手を離せば、カシムはどさりと床に落ちた。
―どうやら、先程のことで気絶してしまったようだ。]
…ああ、カシム。
その顔だよ。その顔が見たかったんだよなァ。
[いつの間にか獣に変じた右手の爪で、気を失ったカシムの頬をなぞると、赤い線が生まれ、そこからつーっと赤い液体が流れ出す。
口の端から泡を吹いて、目尻には涙をためている彼は、白目をむいてしまっていた。なんとも、マヌケで、ああ、滑稽で。面白くて。サーカスのピエロでも見ているよう。
しかし、気絶してしまったのなら、これ以上の楽しみようはない。
レストランには誰かいるだろうか?誰かがいたら、このままカシムを引きずって行っても、食事にありつくことはできないし、移動させている最中に見つかったら面倒だ。
テオドールは少し迷うように首を捻って、唸って。
結局、今回はここでそのまま食事をしてしまうことにした。]