どこ行くんだよ、ねえ。
[とん、と床を蹴って、くるりと宙で一回転すると、カシムの目の前に着地する。それに、カシムはひっ、と引き攣った声を出した。テオドールはもう一度、床を蹴ると、カシムとの距離を一気に詰めて、彼の顔を右手で掴むと、勢いよく壁に叩きつける。
ベコ、と人間の力ではありえないヘコみが壁に出来た。
叩きつけた衝撃で、意識が朦朧としているのか、カシムの焦点がいまいち合わない。
テオドールは口をへの字に曲げると、軽く―と言っても、人間の基準ではないが―指先に力を入れると、痛みでカシムを強引に覚醒させた。]