[それから、少しだけ空気が変わったような、微かな緊張感。
咳払いを合図に、逸らしていた顔をゆっくり彼の方に向けて]
そうね。
私もあなたと踊りたい。あなたと共に時間を共有して
――もっと色んなあなたの姿が見たいの。
[手を取られると、初めて手をつないだときの記憶が瞬時に蘇る。
――こうして、あなたとつながることを、私は確かに望んでいて]
……ちゃんとエスコートしてくれないと嫌よ。
ダンスでは、男性が踏み出さない限り、女は一歩も前に進めないんだから。
[照れ隠しに出てきた言葉は、ひどく可愛げのない台詞で、我ながら呆れてしまう。
彼は一体どんな表情をしているだろう。
その後、手が持ち上げられるのを感じた途端、指先にやわらかくもあたたかい炎が灯る感触。
手は離すことなどなく、なされるがままに]