―過去の記憶―
[優しく聡明で、人望も厚かった父。誰からも慕われ、誰からも好かれていた。
幼き自分には大層キラキラして見えて、憧れていた。
父と母と自分、決して裕福ではなかったが幸せに満ち溢れていた。
しかしその幸せも長くは続かなかった。]
―――えんせーたい?
[父が、未開の地の開拓に向かう部隊に選ばれた。
腕の立つ軍医だった父が選ばれたことを、周りの大人達は名誉だと笑った。
母も人前では誇りだと、でも夜に独りで泣いていたのを知っている。
幼心にも、これは決して喜ばしいことではないのだと。
自分と母は―――――棄てられたのだと、思ってしまった。]