[男の名前は――――=ドルニャーク、風花の村で死した行商人の遠縁にあたる者である。悪名高き狼《フェンリル》に属する男が名前で呼ばれることはすくない。持ち前の警戒心とそれに付随する逃げ足をもって、如何なる難所からも生還するところから死にそびれ、黄泉路帰りのドルニャークという……些かどころではなく本体に勝っているような異名で呼ばれている]ある意味、あってるんですけどね…[その場所にはひとりきり。苦笑しつつの言葉は誰に言う為でもなく。ただ、今書き記している事柄から、彼が…風花の村のあの男の記憶を持っていることは想像に難しくない]