―ある王の手記―
ここより北西にある隣国との和平を願い、その基盤作りに尽力してきた我が国であったが、目標を達する間際、王は何者かに暗殺されてしまった。
和平の道を阻止したい過激派が、忠臣の中に隠れていたという事なのだろう。
だが結局、犯人の特定には至らなかった。
そして私は23という年齢で、国王の座に就くこととなる。
民からの信望を集めていたのは先王。私はその上に胡坐をかいて座っているだけだ。
臣下たちは誰も彼も信用ならない。
私の父を手にかけた者が、平静を装ってのうのうと過ごしているのだから。
だが、クレメンスなら。彼だけには本音を話す事が出来る。
彼だけは違うと、そう確信できるものがあった。
王の近くにいた彼もまた、王と同じように殺されかけたのだから。