― 同・レストラン内 ―
[ベネディクト准尉が座るボックス席の、通路を挟んだ向かい側。
赤いジャケットを着た男が、丁度ベネディクトの対角線上、彼の顔がよく見える席に座って、黙々と食事をしている。
ドロイドに運ばせた紫色に茹で上がった宇宙ロブスターを、慣れた手つきでバリバリと殻を剥き、次々と口に頬張る。
男の首に巻かれた黒いチョーカーに、一瞬赤い基板のような模様が浮かぶ。男はロブスターを剥いた手指をお絞りで拭くと、チョーカーに親指を押し当てる。
ナノマシンによる無線回線である。]
――こちらディースリー、目標を確認。
ここまで他者との接触なし。
…コーヒー相手にブルブル震えてやがるぜ。ビビリかよ。
"ご苦労様です、中尉。そのまま監視を続けて下さい。"
中尉、ね。50年で2階級しか昇進しないとは、亀よりも遅い
"コールドスリープ期間を除けば、貴殿の実質覚醒期間は50年中7年程度。そこそこ妥当な昇進スピードでは?そもそも、貴殿の素性を鑑みれば、異例の昇進となります"
分ぁってるっつの。冗談だよ。
[ころころ声色を替えながら、冗談交じりの通信を続ける]