[凍えきった細い彼女の指先に触れる。そのまま引き寄せて、抱きしめる。
彼女が男の身を裂こうとするなら、避けることは多分叶わない。それでもオクタヴィアを繋ぎとめる腕だけは、決して離そうとしないだろう]
きっと昔から、好きだった。
君が傍に居ることが当たり前すぎて、気づかなかった。
馬鹿だな、俺は……。
[訥々と話す。そんな言葉で、彼女の衝動が収まるなんて考えてはいない。ただ、どうしようもなくやりきれなくて、言わずにはいられなかっただけ。
彼女の温もりから離れぬまま、右手はコートのポケットを探りナイフを取り出す。それを握る指先に、震えはない*]