[赦しになるはずの真白の雪は、皮肉にも彼女の指先の赤を際立たせる。一度視線は落ち、再びあげられた愛する人の顔は苦しそうに歪む]
大丈夫。
[声にならない声。分かっていた。
それでも雪を踏みしめ、ゆっくりと彼女に近づいていく。一歩後退するなら二歩。二歩後退するなら三歩]
ずっと一緒にいると、約束した。
[今宵の罪を隠しても、きっと彼女は苦しみと衝動に押し潰されてしまう。救ってやるには、解放してやるには、もう選択肢は幾らも残ってはいなかった。
もっと自分が確りしていれば、別の未来もあったのだろうか。後悔は胸を刺し続けるけれど、その痛みを見せることなく男はいつものように笑った]
逃がさない。
[それは呪いにも似た言葉]