[ イングリッドと話したり、その顔を見たりすると、
すでに凍りついて何も感じなくなっていたはずのテオドールの心が、
じわりと疼くことがある。
例えばベリアンやウェルシュは、まともな社会からこぼれ落ちた人間の屑だ。魔軍の他に行く場所もない。
だが、イングリッドは違う。テオドールと会わなければ、まともに生きていけた女だ。
そうすれば彼女は未来において……。
だがそれでも、魔軍には必要な女だった。
そして、騎士団に置いておくには危険な女だった。
テオドールの目的達成の為、彼女をこちらのものにすることは不可欠だった。
感情を排し、テオドールはごく事務的なやり取りをのみする。 ]