[深夜、ふと獣の遠吠えを聞いて目を覚ます。森から届いたにしては、近い気がした。
寝台から這い出ると、窓を開ける。肌を刺す冷たい風に混じって響くその声は、何処か泣いているように聞こえた。…否、気のせいだろう。獣が、泣くなんて]
―――……。
[真っ先に過ったのは、誰よりも大切な人の顔で。
連絡を取ろうかと手を伸ばした携帯電話を、しかし直ぐに置いてしまった。そして急いで着替え始める。胸騒ぎがした。これまでで、一番強く。
――オクタヴィアに、逢わなくては――
直接彼女の無事を確認する以外に、このざわつきを解消する方法はなさそうだった]