[オークの木に寄り添い、ざらざらした表面を撫でる。力強い枝は、今は何も語らない。]
(…突き刺して、ころして、くれ)
[破れる心臓。ごふり、と気道から食道からこみ上げる血を止める術もなく、窒息し、絶命して、溶け出す躰を糧にしてまた繁る雑草を想えば、思わず震え、たまらなくなる。]
[大いなる木々の枝に心臓を貫かれ、噴き出す鮮血も、躰も、大地に捧げて、この森に還っていきたい──ただ捕食され、餓狼の腹を満たすよりは。
そんな退廃的な感情を持て余しながら、ルートヴィヒは祈りをささげる。──せめて仲間達が、狼の餌食にならぬように、と。