[ミルクティーを手にぼんやりとしていると、ふと、何かに呼ばれた気がして手を止める。
次の瞬間、何時もとは違う感覚でフラリと身体が沈んだ。咄嗟にテーブルに手をつき、倒れることは免れたものの、テーブルからはカップが落ち、砕ける。]
──………っっ!
[呼吸を整えようと、目を閉じ、深呼吸に集中しようとする。こんなにも続けて眩暈に襲われるのは初めてのことだった。
怖い怖い怖い………
……やっと掴んだ温かさが掌からサラサラと溢れてゆく……
暫く身体を抱き抱えるように震えていたが、漸くそっとその眼を開いた時には、琥珀色のその瞳に朱が差し、その唇を美しく弧にする。
そして何かに誘われるように、
ふらりと外へと。
裏口の扉は開いたまま、冷たい空気が部屋の中へと流れ込む。
奇しくも今日は
月のない夜── ]