【見】 イベントコンシェルジュ ルージュ

―船上、村を離れつつある中―

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わずかに数隻しかない船が一つ、また一つと船着き場を離れ、湖を渡っていく。

私はその最後の一隻の隅に膝を折って座り込み、元来た岸を――その奥、村の北に聳える月狼山のほうを眺める。
……いつも船着き場から湖の向こうを見つめるのとは逆に。

今このときは湖上の冷え込みでか、周囲は靄がかかったように視界が悪く、この距離からは山の姿もぼんやりとしか見ることができない。

儀式を行う人たちには、その山も月光に輝く金狼様とセイラ様の魂の座と映るだろう。


普段は村のことも、自分自身も朧げにしか思えず、村を離れたいと思っているのにそれを叶えることをせず。

唯一、村が金狼様とセイラ様の気配に確かに満ちしこの時に、私はこうして村を離れる。

ほんとうに、不確かで、うらはらな自分……。

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