神父 ジムゾン

　　　――　祭壇　――

[村の北にある祭壇へと辿り着く。
ここからは山の山頂が良く見えた。
狼月山――、
山から月を見上げる狼を思わせる名であり、形だった。
還りたいと望むものに捧げる祈りは、
果たして誰のためのものであるのかと、
いつかも感じたことが今もまた、脳裏に過りはする。

古い岩の表面には、獣の紋様が微かに残る。
近づかずとも、それは知っている。
以前儀式に参加したこともある。
長い時の流れを感じさせる岩は、
自然のものというには色合いが他と異なり、
船とも言い伝えられているものだ。]