負傷兵 シモン

― 祭壇へ至る道 ―

［ニコラスを待たせるわけにはいかないと思ったので、図書室の資料はまた今度。

祭壇へ向かう途中、大丈夫か>>1150という声にはありがとうと返し。歩幅の違いで段々とニコラスの後ろを着いていく形になった時、彼が手に持っていたものを見てはたと気づく］

（しまった。供物、何も持ってこなかった。）

［供えるものは何でも良いと聞いていたが、それにしたって宿の近くで何か買っておけばよかった。

（今から取り繕えるとしたら、今身につけている物を差し出すしか……）

首に巻いたボロの襟巻きに、心許なく握る。

　『いつでも戻って来なさい。君の故郷はここなんだから。』

　かつてこれをくれた人、――自分を送り出してくれた村長の言葉が、耳の奥で昨日のことのように蘇る。

　――どうする。

　ニコラスの後ろで人知れず悩んでいると、やがて遠くから角笛の音が>>1101］