[ 男が落ちたのは右の肩から。甲板にぶつかった衝撃に、一瞬視界がぶれる。冷たい汗が背に滲み、喘ぐように吸い込んだ息には、潮の香りと共に、汗と微かな血臭が混ざり込んだ ]こ、の...![ 転がりながら、ゲオルグの襟首を掴もうかと伸ばした左手は、しかし軍服の襟を握る事が出来ずに僅かに震える。度重なる戦斧の打撃に加えて肩から落ちた衝撃が加わり、指先まで痺れて、細かな動きが出来ぬ状態なのだ、と、認識すると、男は頭をふるりと振った ]