【見】 貴族 ジル

― 村内/どこか ―

[村に着いて間もなく、宿の部屋に荷物だけ置くと、休憩もそこそこに外へ出る事にした。
誰かに案内を頼もうかと考えたけれど、その必要もないほどにこじんまりとしている。

本来、この村には立ち寄る予定はなかった。
数日前に別の場所で、月狼山の麓にあるカルデラ湖と、その中に位置する村の存在を偶然知ったに過ぎない。
本格的な冬に入る前に、旅路を急いでいたはずなのに]

　なんか、気になっちゃったんだよね……。

[その時に聞いた『狼月祭』という収穫祭のこと。
今から向かえば、ちょうど始まる頃に間に合うよ、などと後押しをされたのもあり。
もしかして、あの場所でこの村の事を教えてくれたのは、この村の出身者だったのかもしれないな]