ならず者 ディーター

人の顔見て失礼なやつだな。ン？

［そう言いながら、お兄さんに何持ってるのか見せてみなさい、と言わんばかりにニコラスの手元を覗き込めば、見るからに上等な酒が。
それこそ、特別な日──二十歳の誕生日とか──に出されるような値が張る代物だ。

さて、ディーターは逡巡する。
これは一本だけだろうか。自分を見て飛び上がるということは、見つかりたくはなかった、と予想できるだろう。──では、一本だけだろうか？］

ニコライ、ソレは一本だけか？

［そう聞いてみる。
もし、一本だけだ、と言われたらそれはもう残念そうな顔で諦めただろうが、もしもう一本ぐらい無事そうなものがあったら、その時はやりぃ！と言わんばかりに一本かっぱらっていっただろう。*］