― 帝国・公爵家館一室 ―[そこは調度品に彩られた寝室だった。蒸せるような臭いには様々なものが混じっている。すえたような汗のにおい、眉をひそめるような生臭いにおい。そしてそれらを覆いつくすように上塗りされてゆく、鉄錆のにおい。そんな中出迎えるのは、笑顔の兄。変わらない笑みが、懐かしくて悲しい。]