旅人 ニコラス

― 村内/レジーナの宿屋・温泉 ―

[狼月の村に戻ったからには、温泉に入らねば！
という訳で、疲労回復と怪我の療養のために、さくっと男湯に入ることを決めた。

徒歩で鍛えているだけあって、普段は本を運んだ程度では全然平気なはずなのに、腕や背中に痺れが走る。元々古傷が気候や気温の変化でしくしく痛むことがあるので、きっと労働よりもそちらが主な原因に違いない。

もしかしたら明日急に寒くなるんだろうか、今夜は温かくして寝ないといけないかもしれないと思いつつ、脱衣所でそそくさと服を脱ぎ、代わりに湯着を身にまとった。

普段服に隠れて見えない部分には、七年前の転落事故でできた無数の傷跡が残る。正直言って他人に知られたくないので、湯着がある宿屋はありがたかった。
その中で、左上腕部には何故か刃物で刺されたような跡がある。いつどこで誰にやられたのか、こちらも全く覚えていない。]