負傷兵 シモン

［ところで、暖炉の前で地べたに座り込むボロを着た隻脚の男と言うのは、傍目には如何に映るものなのか。それはもはや言うまでもなくであるが、如何に思われようとも今の男には正直どうでも良かった。

かじかむ指がほぐれたなら、荷袋を開いてガサゴソと。
取り出したるは、

両腕いっぱいに抱えた大量の葉っぱや麻の布切れ。
どれもなにやらびっしりと文字を書き記してある。

それらを暖炉の火に惜しげもなく投げ込んで、パチパチと燃える様を眺めているのだ。

焚べられたそれらは炎の中で灰色によじれ、うねり、踊りながら、真っ白に朽ちていく。

もしも誰かが焚べられる前のそれらを覗き見ることが出来たなら、そこに書かれた内容が、どれも誰かに当てた便りであることに気がつくだろう。

そしてその瞬間、じっと炎を見ていた顔がパッと振り向き、眼と眼を合わせてきてこう言うのだ］