(茶番もいいところだ)
[再び頭を垂れ、冷えた瞳で笑む。
ディーク・フォン・ベルンシュタイン大佐。
そう名乗る男は、髪を短くしてはいたものの、明らかに知己の面影を宿していた。]
(…弓手側の肩を上げ過ぎる癖がある、――か。
あれから劇的に狙撃の精度は向上したが、…もう、4年も銃は持っていない、な)
(……誤算だな。此処まで顔見知りに遭うとは)
[内心苦笑しつつ、しかしそれは特に致命的な事態でもない、と思い直す。傭兵として持参している手形が本物である以上、別人と言い張ればそれ以上の追求は不可能だ。
エルンスト・ヒンメルの本名を知る者は、当時の学長と、国許の仲介員、――それに、あと一人しかいない。]