―6年前/回想―
――マーロウ、まだ、それを持っているのか?
[試験休みに会話を交わしてから、数ヶ月。
彼と己はダーフィの体調の報告を通じ、たびたび話をする仲になっていた。
寮も学年も違う彼とは、主に昼時や放課後の学食で顔を合わせる。
その日も生クリームたっぷりの苺クレープを頬張っていたヒンメルの前に、少量の軽食を手にした彼は座り、たわいのない雑談をしていた。
確か、今読んでいる本の話だっただろうか。
見せようと鞄を開けた彼が、何気なくテーブルの上に置いたもの。
それは確かに見覚えのある、キャラメルの缶だった。]