ならず者 ディーター

─ 村内/記録・ディーター・ロプス ─


［ディーターという男が、保管庫の内容を冒頭から最後の一字まで覚えているのは、この村に馴染んだ者ならもう気にならないかもしれないが、外からやってきた者から見れば奇妙だっただろう。

ディーターは、狼月村で生まれ狼月村で育った。
ともすれば、金狼様とセイラ様を敬愛するのも、憧れるのも、おおよそ極自然な流れであったと言えるのではないだろうか。］

そうして、せいじんセイラさまは、しんたくのけいじを──

［くるくると拙く回る舌が、覚えたての伝承を語れば、大人たちは「えらいね」「すごいね」と手を叩いて大喜びする。］