羊飼い カタリナ

［　それは出会いの印象が根強く残るからに
　　他ならない。
　　3年前瀕死の状態で教会の庭に倒れていた彼女を
　　最初に見たのは私だった>>580

　　たまたま所用で訪れたときのことであるが
　　彼女の有様を見て酷く取り乱した。

　　介抱もできず半狂乱になって大声で泣き叫んでいた。
　　声を聞いて大人たちが駆けつけてくれるその時まで。
　　なんでそうなったのか私でも良くわからない。

　　その頃はもう祖父もおらず独り立ちして
　　羊飼いの仕事もやっていた。屠殺も経験していた。
　　血や人の怪我程度で錯乱するはずがなかったのだ。

　　けれどだめだった。
　　言いようのない恐怖と嫌悪が押し寄せてきたのだ。

　　── 久しぶりに会うと
　　　　あの日のことを思い出してしまう］*