[悪い夢から覚めた後のように、現実感が失せていた。
覚めているのか、いないのか。
何が起きたのか、確かめるすべはなかった。
彼が生きているのかも死んでいるのかも。
何も考えられなかったし、何も考えたくなかった。
(――……遠くへ……)
行かなければならない所が、あったような気がする。
不明瞭な記憶。遠く。遠くへ。
再び、家と言う名の灰色の箱へと帰ってゆく。
所詮はここに戻るしかないのだと、そう突きつけられたように思えていた。不相応なものを望んだものが与えられた罰。
……きっと、あの日々から一番、遠い*]