― 帝国前進拠点・執務室前 ―
まあ、そうだが。
前にも言っただろう、まだその予定はねぇって。
[暗殺者について、すぐ目の前にもいますけどね――と笑うリエヴルに肩を竦めて見せる。
公国側の雇い主からの命令があればすぐにでも暗殺するが、今はまだ命令はない。
リエヴルがジェフロイから受け取った通信機は、自分には渡されない。
自分が完全に信用されていない事を知っているから、それに対して疑問を持つことも不満もない。
そもそも、自分が本来所属すべきは帝国軍ではなく、公国軍なのだ。
命令が来れば、公国側に戻るのに。帝国軍幹部との直通用通信機など、貰っても困る。
見送る視線に背を向け、ひらりと手を振って。リエヴルから離れ、拠点内を徘徊しに行く]